保健師コラム
第2回 5/31は世界禁煙デー!
皆さん、こんにちは。先日のGWはいかがでしたか?
インバウンドの影響もあり新幹線や観光地はどこも混雑していて私は実家に帰省するのも一苦労でした。
さて、今回は禁煙について少しお話がしたいです。おそらくタイトルを見ただけで、読んでくださらない方も多いだろうな…と少ししょんぼりしながらも、今読んでくださっている「あなた」は少しでも禁煙に興味がある方だと信じて、これを書いています。
タイトルにもある通り、5月31日は毎年、WHO(世界保健機関)が定める「世界禁煙デー」です。「世界」が頭につくだけあって、やはり禁煙は全世界共通の課題なのでしょう。
この「世界禁煙デー」は平成元年から始まったので、今年でもう35年目です。この35年間でタバコを取り巻く環境は大きく変わりました。まず一番にタバコの値段。今では1000円で2箱買えないということにびっくりです。そして、主に買う場所が自販機からコンビニへと移行しました。(taspoが懐かしいですね。余談ですがtaspoは2026年にサービス終了だそうです)また、東京オリンピック開催をきっかけに東京では飲食店は全席禁煙が義務付けられました。
喫煙者にとっては現在の日本の喫煙環境は非常に厳しく、肩身が狭い思いをされていることでしょう。かくいう私の父も、超ド級のヘビースモーカーです。私が子供の頃はよく、近所のタバコ屋にお遣いに行かされ、「マイセン」(今はメビウス)を買っていました。おつりでお菓子を買ってよかったので当時は喜んでいましたが、今ではありえない話です。
先月、その父が東京に遊びにきました。私は浅草寺までの往復ルート上で喫煙所を事前に探し出し、父がニコチン切れ(イライラ)を起こさないように連れまわるのがとても大変でした。せっかくの雷門を前にして、父は写真も撮らず、喫煙所へとそそくさと消えていきました。
ここまでしてでも、タバコを吸ってしまうとはさぞタバコには魅力があるのだろう、と疑問に感じましたが、これはれっきとした「依存症」のひとつなのです。
ニコチン依存症とは
血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう病気のこと
簡単に説明すると、タバコを吸うことで取り込まれたニコチンは急速に脳内に回ります。そこで脳に刺激を与え、大量のドーパミンが放出されます。このドーパミンという物質は快楽に関わる脳内神経伝達物質であり、「気持ちいい」「落ち着く」となるのです。
ニコチンはドーパミンだけでなく、ノルエピネフリン(覚醒、食欲抑制)、セロトニン(気分の調整、食欲抑制)、アセチルコリン(覚醒、認知作業の向上)などの神経伝達物質の分泌にも関わっています。喫煙してニコチンを常時摂取するようになると、これらの神経伝達物質の調節をニコチンに委ねてしまい、自分で分泌する能力が低下します。
そのため、禁煙したり、タバコを吸えない状態が続くと神経伝達物質の分泌が低下し、さまざまなニコチン離脱症状(イライラ・頭痛・眠気・だるさ等)が出現することになります。タバコが吸えない状態が続いたときに喫煙することによって、離脱症状という不快な症状が消失するため、再び喫煙を続けてしまう現象(負の強化)が起こります。その強化の結果、喫煙を繰り返してしまうのがニコチン依存症の特徴です。
つまり、タバコがなかなかやめられないのは「意志が弱いからだ」と思い込んでいる人がいますが、禁煙できないのは、ニコチン依存症という病気のためだと、まず認識してください。「たばこでリラックスできる」は、脳の「錯覚」なのです。こんなことを書いていると、なんだかタバコが麻薬のように思えてきました。
実際に、使用者が依存症になる割合としては
ニコチン > ヘロイン > コカイン > アルコール > カフェイン
とヘロインやコカインといった麻薬よりもニコチンが強いので驚きです。
ではなぜ、国はタバコを取り締まらないのでしょうか。その辺りは税収面や様々な事情があるのでしょう。タバコとは違いますが、実際にアメリカで1920〜1933年まで施行された禁酒法では、違法な闇アルコールが横行し、反社会的勢力の資金源にもなった背景があります。日本だけでタバコを禁止すれば、隣国などから海賊版が流入し、闇タバコが広がり裏社会で取引される危険性がありますね。なんとも難しい問題です。
私も今まで、喫煙者の方に対して頭ごなしに「タバコは体に悪い!」と指導してきたのを強く反省しました。「依存症」という病気であるにもかかわらず、その人自身を責めてしまっていてはいけませんよね。
「依存症」という病気を少しでも治したいと思う方は、当健康保険組合の「禁煙サポート」をぜひご活用ください。喫煙者本人の健康被害や病気の予防だけでなく、ご家族や周囲の方々の受動喫煙被害も防ぐことを目的に「禁煙サポートプログラム」を実施しています。なんと今なら市販薬の費用補助がひとりあたり2万円!迷っているならやるしかないです!(※先着順)
禁煙治療の成功率は7〜8割ともいわれています。ぜひ一度試してみるのをおすすめします。
禁煙は愛の証
最後に「禁煙は愛の証」だと日本医師会が伝えていることを紹介して終わりたいと思います。
禁煙は、タバコを吸っている人自身の体を愛すことになるだけでなく、周囲への愛にもつながります。いわゆる「受動喫煙防止」ですね。
なんと、「タバコ臭がする」と感じたら、もうその時点でその人は被害にあっているのです。
タバコの煙は、家具や壁紙、カーテン、おもちゃ、自動車の内装、エアコンの表面に付着した後、有害物質が少しずつ揮発し続けます。タバコの煙が見えない環境でも、受動喫煙と同様にタバコ由来の有害物質にさらされてしまうことになるのです。
私は今までにタバコが原因で肺疾患になった人とも携わってきましたが、家族や周囲の人からの受動喫煙により低体重で生まれてきた小さな赤ちゃんとも出会ってきました。まだ何も知らない小さな命が、タバコの被害を受けていることにショックを隠せませんでした。ぜひ喫煙者の皆さんには今一度タバコの害と禁煙のメリットについて考えてもらえるとうれしいです。そして気が向いたらいつでもご相談くださいね。