保健師コラム
第4回 脳の疲れ、溜まっていませんか?
皆さん、こんにちは。あっという間に今年も半分が終わりました。東京も毎日30℃を超える気温で本当に暑いです。電気代節約も大切ですが、それよりも命のほうが大切ですので無理はせずに、エアコンをつけるなど適宜気温や湿度の調整をしてくださいね。
先日、私は関西の実家に所要で帰っていたのですが、そこでスマホを忘れてきてしまいました。東京に帰る新幹線の中で気が付き、思わず「あっ!」と大きな声が出て周囲の人を驚かせてしまいました。実家に電話しようにも新幹線には公衆電話はありませんし、そもそも親の携帯番号など覚えていません。夫にも連絡できず、電車の乗り換えアプリも使えない始末…。なんとか自宅には帰ってきましたが、スマホがないことにより、イライラして落ち着かず、私がいかに普段からスマホに依存していたのか思い知ることとなりました。
2日後、なんとか実家から宅急便でスマホを送ってもらうことができましたが、スマホが無い間の時間はとても長く感じました。1日目は前述のとおりずっとイライラ・そわそわして落ち着かなかったのですが、2日目は買ったままで読まずに積んでいた本を読んだり、ネットショッピングではなくスーパーに買いものに行ったり過ごしているうちに、なんだか頭がすっきりしたような気がしました。いわゆる「デジタルデトックス(スマートフォンを置いてデジタル世界から一時的に距離を置き、脳の疲労回復を促すこと)」ができたようです。
今では私のようにスマホが生活に欠かせない人も多いのではないでしょうか。目覚まし時計、SNSやメールチェック、通勤中にネットニュースや動画を見たり、ゲームをしたり…。私は、夜眠る前に布団の中でもSNSチェックとネットショッピングをしてしまいます。1日中スマホを使い続けるということは、脳を1日中ずっと働かせているのと同じことといえます。スマホから得られる情報量は自分が思っている以上に多いのです。膨大な情報を脳が処理し続け、こうした状態が続くと、休んでも疲れが回復しない「過労」となることがあるので注意が必要です。
人間は受け取る情報を脳の「前頭前野」という部分で処理していますが、前頭前野の情報処理機能には大きく分けて、①浅く考える機能 ②深く考える機能 ③ぼんやりと考える機能の3つが挙げられます。
絶えずスマホを見て情報をインプットしていると、①の「浅く考える機能」ばかり使うことになり、②③の機能は使われずにいざ使おうとするとうまく働かずパフォーマンスが低下すると言われています。
① | 「浅く考える機能」が疲れてくると、「物忘れが多くなる」「約束を忘れる」「うっかりミスが増える」「つまらないことに固執する」などの症状が出てくる可能性があります。 |
② | 「深く考える機能」が低下すると、思考力や判断力、集中力、意欲が低下。感情のコントロールもきかなくなって、「イライラしやすくなる」「キレやすくなる」「やたらと涙が出る」といった症状も現れると言われています。 |
③ | 「ぼんやりと考える機能」とは、人はぼんやりしている時に情報の整理や分析を行ったり、「自分はどこに向かいたいのか」「自分とは何か」など、人間の本質に関わる思考を培ったりしているのです。この機能が低下してしまうと、自分を客観視できなくなり、手近な快楽に流されやすくなります。 |
これを書いていて、私もまさにこの通りだ…と怖くなりました。
さらに、前頭前野の働きが悪くなると、心身を整えるカギとなる自律神経も乱れるため、多くの人が慢性的な疲れ、頭痛、めまい、不眠、肩こり、腰痛、冷え、便秘、腹痛といった身体的な不調を伴います。この状態を放置すれば、かなりの人がうつ病に移行していく危険性もあります。
脳が疲れることで、体の不調が出るとは驚きですね。
脳疲労を防ぐためにも、スマホから少し距離をとることが大切です。
- お風呂・トイレ・寝室にスマホは持ち込まない
- 食事中はスマホを触らない
- 長時間ネットサーフィンはしない
- 誹謗中傷のSNSやサイトなどを見ない
など、意識してみてはどうでしょうか。確かに、最近は東京都知事選がありニュースやSNSが出馬した人の誹謗中傷などであふれており、私もとても気持ちがネガティブになってしまうことがありました。脳は自分が思っている以上に繊細なのですね。
また、先ほど述べた③の「ぼんやりと考える」ということが脳や心に重要だということがわかってきました。1日5分からでも、ぼーっとする時間を作ってみてください。たとえば、スマホを家に置いて、散歩してみてもいいです。有名な話で、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏は毎夕食後に30分間皿洗いをしていたそうです。単純作業に没頭していると脳が活性化し、良いアイデアが生まれやすいのかもしれませんね。私はよく、料理をしてストレスを解消します。食材をひたすらみじん切りにしてキーマカレーを作るのです。脳がすっきりして悩み事もどうでもよくなるので、とてもおすすめです。
皆さんの「ぼーっとする時間」のおすすめ方法があればまた教えてくださいね。
参考・引用サイト:「大正製薬 大正健康ナビ」